詳細説明 【実用新案】

◀ 実用新案に関わる業務

A)保護対象

保護対象は「物品の形状、構造または組合せに係る考案」です。

考案は「小発明」といわれることもありますが、「創作された技術的アイディア」のうち、物品の実用的価値を高める「物品の形状、構造または組合せに関するアイディア」のみが実用新案の保護対象となります。一定の形状を有していない化学物質などの材料自体に関するアイディア、物の製造方法などの方法に関するアイディア、コンピュータプログラム、動植物品種などは保護対象ではありません。

「物品の形状、構造または組合せに関する技術的アイディア」は、特許の保護対象でもあることから、特許と実用新案のいずれかを選択することが可能です。実用新案登録出願に対して実体的審査がなされず方式要件・基礎的要件の審査のみが行われ、早期に実用新案権が付与され、権利の存続期間も短い(最長で出願日から10年)ことから、実用新案登録は、早期に実施が開始され、ライフサイクルが短い製品の保護のために利用される傾向にあります。

B)権利取得手続

①実用新案登録出願

実用新案権を取得するためには、考案者、出願人、及び権利を取得しようとする考案を特定し、図面に表して、実用新案登録出願をしなければなりません。

出願人は、考案者(自然人)か、考案者から出願の権利を譲り受けた人(自然人または法人)でなければなりません。実用新案権は、考案者ではなく、出願人に付与されます。

権利を取得しようとする考案は、その内容が第三者に十分に理解されるように示されなければなりません。

また、出願時に、出願手数料と共に1~3年分の登録料を納付しなければなりません。

②方式要件・基礎的要件の審査

実用新案登録出願の内容は、権利発生前には公開されません。

審査は、出願の全件について行われます。

有効な実用新案権であるためには、実体的要件(考案が新しいこと、容易に考えられたものでないこと、等)を満たしていなければなりませんが、審査のための時間が長期に及ぶと、早期に実施が開始され、ライフサイクルが短い製品の保護のために利用されることが多い実用新案の意義が失われてしまいます。そこで、実用新案登録出願に対しては、早期権利化を図るため、以下に示す基礎的要件と、書類が整っているか、手数料が納付されているか等の方式的要件の充足性のみが審査される、実質的な無審査主義が採用されています。

<基礎的要件>

  • 物品の形状、構造または組合せに関する考案であること
  • 公の秩序、善良の風俗、公衆の衛生を害するおそれがないこと
  • 実用新案登録請求の範囲の記載様式に従っていること
  • 複数の無関係な考案が記載されていないこと
  • 明細書、実用新案登録請求の範囲、図面に必要な事項が記載されていること、記載が著しく不明確でないこと

③ 方式要件・基礎的要件を満たしていない場合

方式要件・基礎的要件の審査において、要件を満たしていない場合には、方式補正命令がなされます。この命令に対しては、要件を満たすように補正した補正書を提出します。補正書を提出しない場合には、出願が却下され、実用新案権の取得が不可能になります。

④ 実用新案権発生

方式要件・基礎的要件の審査において問題がなければ、或いは、補正書の提出により問題が解消されれば、設定登録がなされ、実用新案権が発生します。

方式補正命令がなされなければ、出願日から約2か月後には、実用新案権が発生します。また、実用新案登録を受けた考案の内容が、登録実用新案公報として一般に公開されます。

⑤ 実用新案登録に基づく特許出願(必要に応じて行われる手続)

事業方針の転換等により、実用新案から特許に変更して、実体的要件の審査を受け、最長で出願日から20年の存続期間を得たくなる場合がありえます。この場合には、実用新案登録に基づく特許出願が可能です。ただし、この出願が可能な期間は、実用新案登録出願の出願日から3年以内に限られます。また、同一内容の権利が重複して認められないため、実用新案権は放棄しなければなりません。変更後の手続きは、特許法に基づいて行われます。

⑥実用新案技術評価書の請求(必要に応じて行われる手続)

有効な実用新案権であるためには、特許権と同様の実体的要件を満たしていなければなりません。しかし、上述したように実体的要件の審査がなされずに実用新案権が発生するため、実用新案権者には権利の有効性に関する熟慮が求められています。

権利の有効性の判断は専門的であり難しいため、権利の有効性に関する客観的な判断資料を提供する趣旨で、実用新案技術評価書制度が設けられています。特許庁に対して実用新案技術評価の請求をすると、出願または登録された考案について、以下の事項に関する実用新案技術評価書が提供されます。

  • 出願時点で頒布されていた刊行物に記載されていないか
  • 出願時点で頒布されていた刊行物の記載から容易に考えられたものでないか
  • 他人より先に出願しているか
  • 考案が、既になされた他人の特許出願または実用新案登録出願の出願書類に記載されていないか

自己の実用新案権の侵害者に対して権利を行使するためには、その前に実用新案技術評価書を提示して警告をすることが要求されています。

C)権利内容

実用新案権とは、「一定期間(存続期間中)実用新案登録を受けた考案を事業として独占的に実施することができる権利」です。但し、登録を受けた考案の実施が他人の権利を侵害する場合には、当該他人の許諾が必要です。登録を受けた考案の実施とは、次の行為をいいます。

考案に係る物品を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、輸出し、若しくは輸入し、またはその   譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡または貸渡しのための展示を含む。以下同じ。)をする行為

実用新案権の存続期間は出願の日から10年です。但し、4年目以降の登録料を前年までに支払うことが条件です。

実用新案権者は、自ら登録を受けた考案を実施するほかに、他人に実施権(登録を受けた考案を実施する権利)を許諾することが可能です。また、通常の財産と同様、実用新案権を譲渡することも可能です。さらに、登録を受けた考案の無断実施者に対しては、その実施が事業としての実施ではなく個人的・家庭的実施である、その実施が試験研究のための実施である、その実施が実用新案登録出願より前から善意で行われていたものである等の特別事由に該当する場合を除き、差止請求や損害賠償の請求等をすることが可能であり、刑事責任を問うことも可能です。

ただし、実用新案登録出願に対する実体的要件が審査されずに実用新案権が発生するため、登録を受けた考案の無断実施者に対する権利行使は、極めて慎重に行われなければなりません。実用新案権者には、登録を受けた考案の無断実施者に対する権利行使に先立ち、無断実施者に対して実用新案技術評価書を提示して警告をすることが義務づけられています。また、警告或いは権利行使の後に実用新案登録が無効審判により無効とされた場合には、権利が有効であることを示した肯定的な実用新案技術評価書に基づき、その他必要な注意をもって警告或いは権利行使を行ったときを除いて、警告或いは権利行使によって相手方に与えた損害を賠償する責任があります。したがって、実用新案権者は、権利を濫用することがないよう、実用新案技術評価書その他により権利の有効性を十分に吟味した上で、適切な権利行使をしなければなりません。

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