詳細説明 【商標】

◀ 商標に関わる業務

A)保護対象

保護対象は「商標」です。
商標は、「事業者が、自己が取り扱う商品や役務を他人のものと識別し、商品や役務の同一性を表示するために、その商品または役務について使用するマーク」ということができます。保護対象は、現在のところ、文字や図形などの目に見えるマークに限られますが、平面的なマークに限らず、立体的なマークも保護対象となります。また、特定の商品または役務のためのマークでなければならず、商品または役務が特定されていないマークそのものは保護対象ではありません。

B)権利取得手続

① 商標登録出願
商標権を取得するためには、権利を取得しようとする商標を特定して商標登録出願をしなければなりません。商標登録出願に当たっては、出願人、使用するマーク、及びそのマークを適用する商品または役務の範囲を特定した【願書】を準備する必要があります。マークの記載と、商品または役務の範囲の記載により、登録を受けようとする商標が特定されます。出願人は、商標を使用する事業者(自然人または法人)であり、出願人に商標権が付与されます。また、商品または役務は、定められている区分に従って、区分ごとに記載しなければならず、区分が増えるごとに出願料が加算されます。
また、商標により「事業者の信用・ブランド」が保護されるという観点から、以下に示す特別な制度が設けられています。

  • 防護標章登録出願
    全国的に周知となっている商標(著名商標)の権利者が行う出願であり、自己の商標権に係る商品または役務と非類似の商品または役務について、他人の使用を阻止するためにする出願です。
  • 団体商標登録出願
    社団法人、事業協同組合等の事業者を構成員に有する団体は、その構成員に共通に使用させるための商標について、団体商標として出願をし、登録を受けることができます。
  • 地域団体商標登録出願
    「地域名と商品名」、「地域名と役務名」、「地域名と商品名または役務名と慣用文字(特産、名産等)」からなる地域ブランドについては、隣接都道府県に知られている程度の周知性を得ていれば、事業協同組合、農業協同組合等の団体が、その構成員に共通に使用させる地域ブランドを、地域団体商標として出願することにより、登録を受けることができます。

方式審査では、書類が整っているか、必要事項が記載されているか等が審査されます。

② 出願内容の公開
他者が出願内容を知らずに同一の商標の使用を開始すると、商品の出所の誤認が生じる等、不測の不利益が発生することがあります。このことを回避するため、出願書類の内容が出願から約1カ月経過後に一般に公開されます。

③ 登録性の審査
審査は、出願の全件について行われます。以下に、主な登録要件を示します。

  • 自己が提供する商品または役務のために使用する商標であること
  • ありふれた商標ではなく、自己の商品または役務と他者の商品または役務とを区別することができること(識別性)
  • 他者が先に登録している商標、他社の周知商標、著名商標と、同一でなく、類似もしていないこと
  • 公共の機関が使用しているマークと類似している、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある、品質を誤認させるおそれがある等、公益に反する商標でないこと
  • 複数のマークが記載されていないこと、商品または役務が区分に従って記載されていること

特許庁審査官による審査の結果、登録要件を満たしていれば「登録査定」がなされ、登録要件を満たしていなければ「拒絶理由」が通知されます。拒絶理由が通知された場合には、必要に応じて登録要件を満たすように補正した補正書を提出するとともに、登録要件を満たしている旨の反論を記載した意見書を提出します。拒絶理由が通知されたにもかかわらず、補正書/意見書を提出しなかったときや、補正書/意見書を提出しても登録要件を満たしていないと判断されたときには、「拒絶査定」がなされ、商標権取得が不可能になります。

拒絶査定に不服がある場合には、拒絶査定不服審判を請求することが可能です。審判官による審理の結果、拒絶理由が不当であると判断されたときは「登録審決」が、拒絶理由が妥当であると判断されたときは「拒絶審決」がなされます。拒絶審決に不服がある場合には、知的財産高等裁判所に出訴することが可能です。

また、補正は、その要旨を変更しない範囲でのみ可能です。審査において要旨変更と判断された場合には、補正が却下されます。補正の却下に不服がある場合には、補正却下不服審判を請求することが可能です。補正却下に承服するものの、却下された内容で商標登録を受けたい場合には、補正却下に基づく新出願をすることが可能です。

出願人が出願された商標を既に使用している、使用の準備を相当程度進めている等の事情がある場合には、早期審査の請求が可能です。早期審査の請求をすると、審査官が早期審査の対象とするかを判断し、対象となれば請求後1.5ヶ月程度で「登録査定」又は「拒絶理由」が届きます。

④ 商標権発生
「登録査定」または「登録審決」がなされれば、10年分の登録料の納付(5年分ごとの分納が可能です)により設定登録がなされ、商標権が発生します。また、登録商標の内容が、商標公報として一般に公開されます。

⑤ 更新登録の申請(必要に応じて行う手続)
商標権の存続期間は10年ですが、権利消滅前に商標権の更新登録の申請をすることにより、さらに10年間の存続期間が認められます。更新登録の申請を繰り返すことにより、商標権を半永久的に存続させることが可能です。

C)権利内容

商標権は、専用権と禁止権とから構成されています。

◎専用権
専用権は、「一定期間(存続期間中)登録商標を事業として独占的に使用することができる権利」です。但し、登録商標の使用が他人の権利を侵害する場合には、当該他人の許諾が必要です。登録商標の使用とは、登録を受けた商品・役務に関し、登録されたマークを使用する以下の行為を言います。

  • 商品又は商品の包装にマークを付する行為
  • 商品又は商品の包装にマークを付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為
  • 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物にマークを付する行為
  • 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物にマークを付したものを用いて役務を提供する行為
  • 役務の提供の用に供する物にマークを付したものを役務の提供のために展示する行為
  • 役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物にマークを付する行為
  • 電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面にマークを表示して役務を提供する行為
  • 商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類にマークを付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報にマークを付して電磁的方法により提供する行為

◎禁止権
他者による登録商標の使用の禁止に加えて、他者の紛らわしい行為を禁止する権利も認められています。
紛らわしい行為には、以下の行為が含まれます。「類似」の範囲は、商品または役務の出所を間違えるほど似ている範囲です。

  • 登録を受けた商品・役務と類似した商品・役務に登録されたマークを使用する行為
  • 登録を受けた商品・役務に登録されたマークと類似したマークを使用する行為
  • 登録を受けた商品・役務と類似した商品・役務に登録されたマークと類似したマークを使用する行為

商標権の存続期間は登録の日から10年(分割納付により5年分しか支払わなかったときは、登録日から5年間)ですが、更新登録の申請により、商標権を半永久的に存続させることが可能です。

商標権者は、自ら登録商標を使用するほかに、他人に実施権(登録商標を使用する権利)を許諾することが可能です。また、通常の財産と同様、商標権を譲渡することも可能です。さらに、登録商標の無断使用者に対しては、その使用が自分の氏名や商品の慣用名等を普通に表示したものに過ぎない、登録商標と同一の商標を商標登録出願より前から善意で使用しており既に著名になっている等の特別事由に該当する場合を除き、差止請求や損害賠償の請求等をすることが可能であり、刑事責任を問うことも可能です。